地質調査業の将来性は?-令和3年度の建設関連業 登録業者数調査―
建設関連業 登録業者数の推移
建設関連業とは、測量業、地質調査業、建設コンサルタント業の3つの業種のことを言います。(補償コンサルタントを含む場合もあります。)
※詳しくは、国土交通省のサイトをご覧ください→ 『建設関連業とは?-国土交通省』(外部リンク)
いつも地質調査の仕事について書いてるわけですが、地質調査業、そして建設関連業というのがどのような業界で、現在の状況がどうなのかを知るのも大事と思い、今回発表された国土交通省の調査結果をまとめてみます。
まずは、測量業、地質調査業、建設コンサルタント業の3業種の登録業者数の推移ですが、以下のようになっています。
建設関連業の中でも、圧倒的に測量業の登録業者数が多いわけですが、どの業種も平成15~17年をピークに減少傾向にあります。
測量業については、全体数も多いですが、ピーク時の14,750業者から3,000業者も減っていることになります。地質調査業、建設コンサルタント業については、微増・微減を繰り返し、近年はほぼ横ばい状態ですね。
地質調査業を始めとする建設関連業は、建設工事に先立って実施される業務なので、建設業の動向つまり国の建設投資に大きく左右されます。
建設業自体が右肩上がりというわけでもありませんし、やはり年間の仕事の発注量にも波があります。
災害の頻発する日本においてこのような業種の仕事が無くなることはないにしても、これからどんどん伸びていくというわけでもない業種なので、登録業者数の推移については、いわゆる飽和状態なのかもしれません。
地質調査業においても、新規登録業者が0というわけではありません。実際、令和3年度も23の業者が新規に地質調査業の登録を行っています。
しかし、労働人口の減少や高齢化、若い人材の不足も相まって、25の業者が登録を消除しています。(廃業18、更新切れ7)
つまり、新規参入と廃業がほぼ同数になり、全体の登録業者数が横ばいの状態が続いているのです。
ただ、ここで補足しておきたいのは、建設関連業に関わる多くの業者が、『兼業』だということです。
測量業、地質調査業、建設コンサルタント業は、業務内容においても非常に密接に関わっていることが多い業種です。
地質調査業においては、地質調査業のみを登録している『専業』の業者は、全体の26%程度しかありません。
つまり、地質調査業については多くが兼業であり、測量業、建設コンサルタント業と併せて3業種で登録を行っている業者の割合が一番高いです。
上の表で見ると、測量業においては、専業の割合が7割を超えており、ダントツです。
これを見ると、測量業は業者数も一番多いものの専業の割合も一番高いので、それだけの業者が測量業のみでやっていける、つまりそれだけの仕事の発注量・額があるということにもなると思います。
一方、建設コンサルタント業は、2種の兼業の割合が圧倒的に高く、特に測量業との2種の兼業を行っている業者が圧倒的に多いことがわかります。
地質調査業については、3業種の兼業が割合的には一番多くなっています。
実際、私の周囲の地質調査会社も、多くの会社が2種及び3種の兼業で営業を行っていますね。ただ、実質的に会社の売り上げでみればほぼ地質調査のみですが、登録や業務の性質、参加資格等の兼ね合いで形式状、他業種も登録している業者も少なくないように感じます。
これからの建設関連業の未来は明るい?
建設関連業についての調査結果をまとめてみましたが、
重要なのは、これらのことが、これから地質調査を仕事として志そうという人たちにとって、プラスなのかマイナスなのかということです。
簡潔に言うと、個人的にはプラスが多いと思います。
【プラスの要素】
・需要が無くならない必要不可欠な仕事
・新規参入も少なく、他業種に比べて業者間の競争は少なめ
・高齢化と労働人口減少により、若手技術者は引く手数多
・やり方次第で伸びしろは十分にある
基本的にメインは国や県市町村などから発注される公共の仕事になることが多いので、先ほども書いたように仕事の発注量にはバラつきがあります。
ただ、地質調査を始めとする建設関連業の仕事は、これからもまず無くなることはないと言っていいでしょう。
道路や橋などのインフラを新しく作る際だけでなく、これからそれらの維持管理や補修、そして災害からの復旧においても欠かすことの出来ない仕事です。
建設業においては人手不足への対応や労働者の負担軽減、工事の効率化などを目指してICTの活用も進められています。
しかし、まだまだICTの活用もこれからの技術という部分も多く、さらに地質調査業においては、技術革新はなかなか進んでおらず、やはりまだまだ技術者の手が必要です。
そのため、労働人口の減少と技術者の高齢化は大変重要な課題です。
逆に、だからこそ、これからこれらの業界を志す若者にとっては大きなチャンスでもあるのです。
革新が進んでいない業界だからこそ伸びしろもありますし、自分の力で新しい分野を切り拓き、他社との差別化を図っていくことも可能だと思うのです。
とは言っても、マイナスの要素になり得ることがないわけではありません。
【マイナス要素】
・これから大きく伸びる業界ではない。
・基本的に肉体的に負担の大きい仕事が多い。
・業界的にまだまだ休日が少なく、残業が多い場合がある。
新規参入が少ないとはいえ、やはり人材不足などで、淘汰されていく業者も出てくることは間違いありません。
実際に登録業者数は横ばいとはいえ、毎年廃業している業者がいることも確かです。
しかし、ここで重要なのは、しっかり知識と技術を身につけておけば、業界全体において価値を発揮できることです。
極端な話、業界全体の技術者不足は進んでいますので、会社が無くなってもそれまで培った経験と技術力を求める会社が他にもたくさんあります。
労働環境や給料などの待遇面もこれから、少しづつですが良い方向に向かうはずです。
今の段階で、少しでも地質調査という仕事に興味のある人は、是非、インターンシップや会社説明会に参加してみてください。
なかなか出会うことの少ない業種だからこそ、その世界で活躍する技術者の存在を実際に感じることで見えてくる世界があるはずです。
↓
↓
※ちょっと内容とは、違いますが、私が最近読んだ本でぜひおすすめしたいものがありましたので、紹介させてください。
瀧本 哲史さんの『武器としての交渉思考』 です。
新品価格 |
言わずと知れた名著かもしれませんが、これはおすすめですね。
仕事に限らず『交渉』は様々な場面で必要です。『交渉』次第で人生は大きく変わります。
そんな『交渉』の心構えと考え方が分かりやすくまとめられた、まさに『武器』になる1冊です!