スパッド台船を使用した地質調査-海上ボーリング-
海上でのボーリング調査。その方法は?
地質調査はやはり陸上の現場が大多数を占めるのですが、ため池や河川内、または海上でも調査を行うことがあります。
その場所の水深や現場状況によってもその方法は様々ですが、やはり陸上とは違う危険や難しさがあります。
私自身、ため池や河川での水上足場を使った調査は何度か見たことがありましたが、今回の海上での『スパッド台船』を使用した調査は始めただったので、その流れをご紹介したいと思います。
まず、陸地、岸壁等から比較的近い場所で水上・海上ボーリングを行う際は、通常使用する単管足場及び桟橋を仮設します。
ため池や、河川での調査においてもこのような形の足場が使われることがよくあります。
ただ、雨による増水や河口に近い場所や海上だと潮の干満による水位の変化や台風への対策など、陸上とは違う安全への対策も多数必要になります。
さらに桟橋や足場に使用する単管パイプは鉄製ですので、海水に長期間触れた状態になるため、錆や腐食が起こり、次の現場には使用できないといったことも起こります。
陸からの距離がある場合には、台船を使った調査方法があります。今回ご紹介するのは、水深が深い場合に使用されるスパッド台船ですが、ダムや河川等では、フロート台船を使用することもあります。
フロート台船を使用した調査は、過去の記事で紹介していますので、下のリンクからご覧ください。
スパッド台船の組み立てと海上への設置
では、いよいよスパッド台船の組み立てスタートです。
通常のボーリング調査の場合の機材運搬は、2~4tのユニック車を使用しますが、スパッド台船はそれ自体がとても大きいので、運搬もトレーラー3台を使用しました。
大型のクレーンを使用して、順番に機材を降ろしていきます。これだけでもかなりのスペースが無いとできません。
↑こちらが、スパッド台船の〝台船〟部分です。4分割されており、この後組み合わせていくので、作業がしやすいように荷降ろしします。
枠の中に、浮力を得る為のフロートが入っています。
↑こちらが、〝スパッド〟部分で、先ほどの台船と組み合わせ、支柱となります。
↑支柱の下部に取り付ける底板。この部分が海底に設置することになります。
↑最後が、支柱を上下に動かすための油圧装置部分です。一つ一つのパーツが大きく、そしてカッコイイですね。
荷降ろしが終わったら、台船の4つのパーツをボルトで組み上げ、さらに付属の部品を組み込んで、台船を完成させます。
台船の組み立ては微調整が大変。もちろん人力で動かせる重さではないので、クレーンで吊りながら、ボルト位置を合わせていきます。
台船が組がったら、ボーリングマシンを載せて、いよいよ海に浮かべます。
そんなタイミングで、すぐ近くをフェーリーが通過することも!支柱を付けるまでは、プカプカ浮かんでいるだけなので、波の影響をもろに受けます。
台船上で、ボーリングマシンの配置などの準備を進める間に、陸上では、スパッド部分の組み立てです。
支柱に油圧装置を取り付けたら、底板と組み合わせていきます。適格なクレーン捌きとベテランオペレーターさんによるスムーズな作業は見ていて圧巻です。
その後、浮かべた台船の四隅に組立てたスパッド部分を取り付けていきます。
4本のスパッド部分を取り付けたら、船が登場。調査ポイントまで、船で引っ張って移動します。(曳航)
船とスパッド台船が調査ポイントに近づいてきました。
手前にあるコーンの延長線上が調査ポイント(写真には写っていませんが、左側にも同じような目印があり、その交点)なので、陸から指示を出しながら、調査ポイントにスパッド台船を合わせていきます。
とは言っても、一台の船で引っ張っているので、『少し後ろへ』なんて言っても簡単にはいきません。少しづつ微調整しながら、『ここ!』というタイミングで、支柱を降ろします。
そうしてようやく、スパッド台船の設置完了です。
そうしてここからようやくメインである、ボーリング調査が始まるわけですね。
高い技術と経験、それを受けついでいく
今回初めて、生でスパッド台船の組み立てから設置作業を見ることが出来ました。なによりそのスケールの大きさに驚きました。
ただ、このスパッド台船を使ったボーリング調査も近年では、昔に比べ発注が減っています。今では、自社でスパッド台船を所有する会社は少なくなりました。
県内でもこういった海上でのボーリング調査に対応できる業者さん、オペレーターさんも少ないようです。もちろん発注される仕事量が少ないので、そうなるのも仕方ない部分もありますが、やはり確実に継承していかなければならない技術だと感じます。
技術や経験を持った技術者の方々がいる間に、若い世代の技術者へ継承していくためにも、業界全体の認知度の向上や、業界としての働きやすい環境づくり、給与の問題など、まだまだ取り組むべき課題は多いです。
未来のために、今、考え、行動していくことを疎かにしないよう心掛けて仕事をしていこうと思います。