小学生向けキャリア教育授業 -『地質調査』ってどんな仕事?-
『地質調査』という仕事をどうやって伝え、職業の選択肢の一つにするか
昨年の12月、突然舞い込んだ小学校でのキャリア教育の講師の話。
『地質調査』という仕事の認知度を上げ、良いイメージ持ってもらい、将来的な職業選択の一つにしてもらえたら、、、という思いでSNS等を使い活動してきた身としては願ってもないチャンス!
小学校ということもあり、個人情報保護の観点から使用できる写真等は限られますが、その時のことを書いてみます。
始まりはたまたまなんですが、小学校の敷地内でのボーリング調査を受注したということです。
もちろん受注した当初はそんな機会をいただけるような話は全くありませんでした。まあ、学校の敷地内で調査をするということ自体は珍しいことでもありませんし、これまでも通常通り調査のみでした、当たり前ですが。笑
そして、調査の時期をどうしようかと技術者が学校側と打合せを進めている段階になり、突然、学校側から『子どもたちへのキャリア教育の一環として、ボーリング作業の見学を含めた授業をやってもらえないか』という打診があったわけです。
その際に指定のあった授業日までは、残り1週間!!
会社に戻ると、担当している技術者はさすがに他の業務もあるし1週間で内容考えて、準備までは出来ないと。いや、まあそれが普通の反応だと思います。
ただ、自分には『やらない』という選択肢は頭に浮かぶ瞬間も無かったですし、答えは『やる』一択でした。
というのも、普段からずっとこの『地質調査』という仕事をどうやってアピールして、認知度とイメージを上げて、仕事の選択肢の一つに入れるか?
どのように伝えれば、子どもたちでも地質調査という仕事の内容をイメージできるだろうか?
ということばかり毎日毎日考えてたからだと思います。そこに関してだけは、その辺の人には負けない自信がありました。
なので、やってみたいことのヴィジョンはすでに頭の中にあったので、その日の夜には、準備する教材も決まりましたし、翌日の夜には、全体の流れのスライドもほぼ完成していました。
その時に気を付けようと思っていたことがあります。
小学校6年生の理科の教科書には、地層や火山などを学ぶ内容があり、小さいイラストですがボーリングの模式図も載っていました。
しかし、私たちはあくまでも理科の授業の講師を依頼されたわけではないということです。
理科で教わる地層などの話を、掘り下げて専門的な内容にするのではなく、『地質調査』という仕事がこの社会の中でどのような役割を担い、どのような立ち位置にあり、実際に何を仕事としているのか。そこをわかりやすく伝えること。
それだけは、最後まで忘れないようにしようと。
準備~そして本番へ!
色々とイメージは膨らみましたが、実際にそれを形にしていくのはやはり大変でした。
さすがに一人ではどうにもならないので、入社2年目の若手技術者にも手伝ってもらい、前々からイメージしていた教材的なものを造ります。
ほんとに頭の中にあっただけのイメージを口頭で伝え、それを形にしてくれた若手社員には感謝しかありません。
ちなみに上に乗っかている白い家の模型は、自前の3Dプリンターで作ってくれたのです!凄い!凄すぎる!!
余裕はありませんでしたが、なんとか前日までにすべての準備を終えることができました。
いよいよ、授業当日。1時間目の授業始まる前に学校へ出向き、マシンのセットの状態などを確認した後、校長先生へご挨拶。(ここもだいぶ緊張しました。笑)
その後、久しぶりにドキドキしながら6年生の教室へ。
授業は前半の20分を教室で、その後外に出て実際の調査風景を見ながらの20分。 20分の授業で何を伝えられるか?
自己紹介の後、まずは、地質調査という仕事が子どもたちの生活、そしてこの社会の中でどんな立ち位置の仕事なのか?を伝えるところから。
学術的な、授業の延長線上にある『地質』の話ではなく、いつかくる職業選択の際にふと思い出してもらえるように、仕事としての『地質調査』を伝えたい。
体の調子が悪いときは、どうしますか?という質問に対して、『PCR検査を受ける!』という答えが返ってきたのは、ならではだなと感じました。
流れとしては、こんな感じで繋げてみました。最初の導入の感触はなかなか子どもたちの反応も良かったです。
そして、そのあとは技術者にバトンタッチして先ほどの模型を使った話へ。
Aの土地とBの土地みなさんだったらどちらに家を建てますか?というところから、目に見えない、地面の中の状態を知るにはどうすればよいでしょう?という流れで話を進めていきました。
スベることは覚悟して臨んでいましたが、モグラに聞いてみるは結構みんな笑ってくれました。
では、地質調査を行うと何が、どのようにわかるのか?を簡単にイメージしてもらえるように。
この土地で、地質調査つまりボーリングを行うとこのような地面の下のサンプルが得られます。
このように、ボーリングを行うことで見えなかった部分を見る(想定する)ことができるようになるんです!(力説!)
Bの方の浅い部分はゼリーのように柔らかい素材で作っているため、コアっぽい模型をみんなに触り比べてもらいました。
ここで、再度どちらに家を建てたいですか?と聞くと、みんなが『A』と答えてくれました。
自分の頭の中でイメージしていただけのプランだったので、果たしてどこまで伝えることができたのかは、わかりません。今思えば、もっとうまくできたかなあと思う部分もありますが、それは次に生かしていければいいかなと思いました。
あと、ここからはおまけとして、また色々とお世話になった杭工事が専門の (株)進明技興 さんへの恩返しとして・・・
じゃあ、Bの土地に建て物は作れないの?ということで、実際に子どもたちにBの土地に木串を差し込んでもらう実験をしました。
下の硬い部分まで木串を刺し、その上に土台を載せると・・・
さっきまで、ぶよぶよの土地で家がグラグラしていたのに、しっかり安定し、押しても沈まなくなりました!という実験でした。
串を実際にさしてみたい人?というとみんなが一斉に手を挙げてくれたのはうれしかったですね。
授業の最後は、学校の周辺にある様々な建物や構造物の写真を見ながら、地質調査が必要かどうかをみんなに考えてもらいました。
後半は、ボーリングの現場とコア観察
後半は外に出て実際のボーリングマシンの作業風景をみんなで見学しました。
ほとんどの子どもたちが初めて見るようで、とても興味深そうに見入っていました。
ただ、一番感動していたのは、間違いなく私自身かもしれません。オペレーターさんがマシンを使って実際に掘削する様子を見つめる子どもたちの姿を後ろから見ていたら、なんだかとても感動してしまいました。
そうです、こういうことです。やりたかったのは!!!
その後、実際にこの現場で採取したコアを見たり、手で触れたりしながら子どもたちに観察してもらい、簡単な柱状図を作成するところまでで授業は終わりとなりました。
子どもたちがワイワイ言いながらコアを触り、土の感触を記入している姿を見ると、一般の人から距離のありそうな地質調査という仕事も、こうやって子どもたちの遊びの延長として感じてもらうことができると実感した瞬間でした。
使える写真が限られるため、うまくお伝えできているかわかりませんが、今回の経験は本当に大きかったと感じます。
また、このような機会をいただいた学校の関係者の方々、教育委員会の方々、そして、無理なお願いに快く対応してくれたオペレーターと助手さん、もう本当に色々な方に感謝でいっぱいの一日でした。
はっきり言って地質調査という仕事が、プロスポーツ選手や医者、歌手などのように、なりたい職業の上位に来ることはないでしょう。
でも、まず地質調査という仕事があること、そしてこの社会の安心で安全な人々の暮らしを支える重要で欠かすことの出来ない仕事であることを、これからを担う子どもたち、若い人たちの知ってもらうことが重要だと考えています。
『出会わなければ 夢は始まらない』
出会ってさえいれば、いつか、選択肢の一つになり得る可能性はある。その証拠に、今回授業を受けてくれた子どもたちからお礼のお手紙をいただいたのですが(涙)、その中に1人、
『いつか仕事を決める時に、仕事が見つからなかったときは、地質調査の仕事をやってみたいと思います。』と書いてくれている子がいました。
それでいいんです!!それで!! 今まで選択肢にすらなかったはずですから。
そう信じて、信念を持ってこれからも活動を続けていきます!よろしくお願いします!