『足場 高さ0.3m超』はどんな時? -足場の区分と桟橋の考え方-

足場の区分と積算の基準

積算のはなし、第3回目は、足場仮設の区分と積算について簡潔にまとめてみます。

ボーリングマシンを使って地質調査を行う場合は、通常、下の写真のような足場の仮設が必要となります。

足場仮設の例
足場仮設の例

単管パイプと板材を使った足場を仮設し、その上にボーリングマシンと櫓を設置して調査を行います。

この足場はその時々の現場状況に合わせて、様々な形状や高さで仮設します。

現在、国土交通省が定めている、『設計業務等標準積算基準書』および同参考資料(国土交通省サイト)通称:青本に定義されている足場の種類は、

◎平坦地足場 高さ0.3m以下・高さ0.3m超

◎湿地足場

◎傾斜地足場 地形傾斜15°以上~30°未満・30°以上~45°未満・45°以上~60°

◎水上足場  水深1m以下・3m以下・5m以下

の4つの種類があり、その中に地形傾斜や水深などによる区分がされおり、それぞれに市場単価がありますので、現場に合わせた足場仮設を計上します。

この中の『湿地足場』については、設計書でもほとんど出てきません。

また、積算という部分でいくと、傾斜地足場と水上足場はどの足場を積算上採用するかの基準がはっきりしています。

なので、基準の曖昧な平坦地足場は後ほど説明することにして、傾斜地足場と水上足場について簡単に説明します。

  

◎傾斜地足場

傾斜地足場の例

名前の通り、ボーリングを行う場所が斜面など、地形に傾斜がある場所での足場仮設に用います。

山岳地帯などで必要になる場合が多く、平坦地に比べて足場の仮設や安全対策、作業スペースの確保が困難な場合も多いです。

傾斜地足場にも市場単価がありますので、積算の際は市場単価を使いますが、地形傾斜の角度により3つの区分に分かれています。

地形の傾斜が『15°以上~30°未満』『30°以上~45°未満』『45°以上~60°』の3段階です。

ただ基準がはっきりしているからこそ気を付けたいこともあります。

それは『実際の現場での地形傾斜の角度』です。

 

例えば、設計書に『傾斜地足場 30°以上~45°未満』が計上されていたとします。

この場合、実際に足場を組んだ際に、本当にその場所の地形傾斜が30°以上45°未満だったかをちゃんと写真等で管理して、記録に残しておくことが重要になります。

傾斜は何度?
地形の傾斜は何度?

  

もし、実際には、45°以上の傾斜があった場合には、足場仮設の単価が変わってくるため、設計変更が必要になることもあるからです。もちろん傾斜がきつくなるほど作業は困難になりますので、実際に行った作業をお金に換える為には、面倒ですが必要なことです。

  

◎水上足場

水上足場例
水上足場の例

こちらも名前の通り、水上でボーリングを行う際に、水上に足場を仮設するときに用います。

水上足場も市場単価がありますので、積算の際は市場単価で計上します。やはり陸上に比べ大幅に作業量も変わるため、市場単価も高くなっています。

市場単価を採用する際には、その現場の水深によって区分があります。水深が、1m以下、3m以下、5m以下の3種類です。

場所によっては潮の干満の影響を受けることがあります。そのため、基本的には、満潮時の水深に合わせた高さの足場が必要になるため、最大水深で判断すると考えてよいかと思います。

  

平坦地足場の区分と使い分け

  

簡単な説明になってしましましたが、傾斜地足場と水上足場はその区分の基準が明確です。

ただ悩ましいのは、1番よく使われる平坦地足場の区分が1番曖昧だという点です。

平成30年の改訂により、それまで区分の無かった平坦地足場の市場単価が2つの区分に分かれました。

足場の高さにより、『高さ0.3m以下(板材足場)』と『高さ0.3m超(嵩上げ足場)』に区分することになったのです。

  

国土交通省 設計業務等標準積算基準書および同(参考資料) 平成30年度 参考資料改訂内容より

  

上の図のように、足場の高さによって2種類に分かれたのですが、、板材足場というより”すのこ”じゃないかと言いたくなる気持ちもわかりますが、問題はそこではありません。

この変更により、通常よく使われる平坦地足場(0.3m超)の方は、市場単価が上がったので、その点は良かったのですが、この2つを明確に使い分けるための基準が存在しないというのが現在の問題点と言えると思います。

つまり、どんな時には0.3m以下を採用し、どんな時に0.3m超の足場が必要なのかがどこにも明記されていないのです。

傾斜地足場や水上足場の区分は、その現場の地形や水深といった状況によって判断できるものです。基準が明確です。

  

一方、この平坦地足場については、地形ではなく、仮設する足場の高さが基準になります。なので、同じような現場状況でも発注者によって、0.3m以下だったり0.3m超だったりと設計書に計上される足場の区分が変わっているのです。

  

  

板材足場の例
高さ0.3m以下(板材足場)の例

 

嵩上げあしば例
嵩上げ足場(0.3m超)の例

  

上の写真を比べていただくとわかりやすいと思いますが、明らかに嵩上げ足場(高さ0.3m超)の方が、足場の仮設に時間と労力がかかります。

なので、市場単価も高さ0.3m以下と0.3m超では、1か所あたり、4万円近くも差があります。

ということは、実際には嵩上げ足場(0.3m超)で作業を行ったのに、設計書が板材足場(高さ0.3以下)になっていたら、それだけ損してしまうことにもなります。

  

 

私のいる地域でも、まだまだ板材足場(0.3m以下)で発注されていることが多いのですが、

基本的に上の板材足場(高さ0.3m以下)を使用するのは、民間の現場で、ノンコアボーリングと標準貫入試験のみを行うような場合に限られることがほとんどです。

特に国や県市長村発注の業務においては、多くの現場で下の嵩上げ足場(高さ0.3m超)が用いられているのが現状です。

全地連のQ&Aにおいても、『サンプリングやオールコアボーリングなどは、作業の特性上ボーリングマシン本体を嵩上げして地上部の作業空間を確保する必要があるため、嵩上げ足場を適用しています。』と記載されています。

 

  

嵩上げ足場②
嵩上げ足場の例②

  

  

そのあたりを考慮して、嵩上げ足場が必要な場合を挙げると

① 土質ボーリング-サンプリング、原位置試験(孔内載荷試験、現場透水試験など)、孔内検層を実施する場合

  

② 岩盤ボーリングーオールコアボーリング、原位置試験(孔内載荷試験、JFT試験など)を実施する場合

  

③ ボーリング孔壁の保護(ケーシング挿入)が必要なボーリング

  

という条件で考えられることが多いようです。

特に、標準貫入試験を併用するオールコアボーリングにおいて③は必須となることが多く、それから考えれば『嵩上げ足場(高さ0.3m超)』を標準の足場として考えるのが望ましいのかもしれません。

ただ、これらもあくまでも解釈の一つであり、国の基準書に明記されているわけではありません。実際、担当者によっても捉え方が変わります。

  

しかし、発注時の設計書では、『平坦地足場(高さ0.3m以下)』が計上されていたとしても、実際の調査で高さ0.3m超の足場を仮設する必要があった場合などは、変更の対象としてもらえることも多いです。写真でしっかり管理して、出来高数量提出時に担当者に確認してみましょう。

  

  

おまけ『桟橋仮設』の積算の考え方

  

足場仮設の積算のおまけとして、『桟橋仮設』について積算の考え方の一例をご紹介します。

  

地質調査における桟橋仮設とは、堤防などからあまり距離のない水上や河川内でボーリングを行う場合に、足場と陸を行き来するための通路を仮設することです。

  

◎桟橋の例

桟橋①
桟橋の例①

  

桟橋の例②

   

桟橋の仮設も足場と同じ単管パイプと板材を使って行います。

スムーズに機材の運搬等が行えるように足場の高さと同じ高さで仮設し、転落防止のための手摺も設置します。そして、基本的に桟橋の幅は約1.0mです。

  

この桟橋仮設は、ボーリング調査においても比較的よく用いられる方法なのですが、基準書等には歩掛りがありません。もちろん市場単価もありません。

なので、実際に仮設した足場仮設をお金に換えるためには、発注者側の担当者との積算方法や単価の打ち合わせが必要になります。

  

桟橋仮設については、基準がないため、発注者によっても考え方が変わります。

  

土木工事の積算基準にある足場の仮設を参考にして積算する方法や、足場の仮設における人工を基に積算する方法なども採用されることがあります。

  

ただ、最近よく採用されていると聞くのは、足場の面積から考える方法ですかね。

あくまでも一例なので、参考までに。

  

平坦地足場の概念図にあるように、基本的に足場は、4.0m×4.0mの正方形です。(もちろん現場状況によって様々です。)

  

足場の概念図
国土交通省 設計業務等標準積算基準書および同(参考資料) 平成30年度 参考資料改訂内容より

  

  

つまり、足場の面積は

4.0(m) × 4.0(m) = 16.0㎡  ですね。

  

そして、先ほど書きましたが、桟橋の幅は基本的に、1.0mとすることが多いようです。

  

ということは、桟橋 1m当たりの面積は、足場の16分の1と同じと考えことができますよね。

桟橋を組む際の条件は足場仮設の条件と同じになることが多いので、単純に平坦地足場や水上足場の市場単価を16分の1にした金額が、桟橋の仮設1mあたりの金額となります。

  

 

足場面積
足場面積と桟橋の関係

  

  

例えば、水上足場(水深3m以下)の足場に対して、10mの桟橋を仮設した場合・・・(市場単価は参考)

  

421,000円 ÷ 16 ≒  26,312円(1m当たり)

26,312円 × 10 =  263,120円

 

となりますね。

個人的にはこの考え方がとてもわかりやすくていいのではないかと思います。足場の面積は〝青本〟で定義されていますし。

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※注意 青本における水上足場の定義には、『仮設のための作業船を含む』という記載がありますので、その辺の考え方も含めて調整が必要になります。

  

ただ基本的には歩掛も市場単価も存在しませんので、3社の見積合わせが必要になることもありますし、発注者側との打ち合わせが必要になりますので、その際の考え方の一例として捉えていただけるとよいかと思います。

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