令和3年『水質が最も良好な河川』が決定―地質調査と環境保護―

日本で最も水質が良い河川はどこ?

少し地質調査の話からは離れますが、先日、国土交通省より令和3年の『水質が最も良好な河川』が発表されました。

国土交通省では毎年7月の河川愛護月間に合わせて、全国にある一級河川の水質調査結果が公表されています。今年調査の対象となったのは、日本全国の159の河川です。

では、令和3年の水質が最も良好な河川に選ばれたのは、どの河川でしょうか。今年は12河川が選ばれています。

水質が最も良好な河川
令和3年 水質が最も良好な河川『国土交通省』

    

いかがでしょうか?みなさんのお住まいの地域の河川はありますか?

私の住む熊本県では、球磨川と川辺川が選ばれています!日本一の清流とも言われる川辺川は、なんと平成18年から16年連続となっています。素晴らしい!

そして、日本三大急流の一つで、令和2年7月豪雨で大きな被害の出た球磨川も昨年に引き続き選ばれました。

  

その他も、北海道から九州まで、その地域を代表する美しい川が選ばれていますね。福島県の荒川も12年連続となっています。

水質が最も良好な河川2012-2021『国土交通省』※資料全体のPDFが見れます。

  

国土交通省のページでは、詳しい調査方法や基準、また全国の河川で行われている取組みなどが紹介されていますので、是非見てみてください。↓

https://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo04_hh_000186.html

日本全国には多くの美しい川があり、人々の暮らしを豊かにしているのだということがよくわかりますね。

  

 

治水対策と環境保護、美しい川を未来へ残せるか?

日本全国に残る多くの美しい川、そしてその恵みや人々の暮らし。そんな姿をいつまでも残したい、誰もがそう思うと思います。

そんな時に避けては通れないのが『災害』です。

  

令和2年7月。まだ記憶に新しいですが、令和3年の『水質が最も良好な河川』にも選ばれた球磨川が氾濫し、八代、人吉・球磨地方などで大変大きな被害が発生しました。

  

それはもう、私自身テレビで映像を見て言葉を失うような光景が広がっていました。

  

普段から仕事の関係で、球磨川沿いを車で走ることもよくありましたが、その際に見ていた美しい球磨川の姿からは想像もできないようなものでした。

 

しかし実は、日本3大急流にも名を連ね、別名『暴れ川』とも呼ばれる球磨川では過去にも昭和~平成にかけて15回ほども洪水被害が発生しているのです。

  

◎球磨川の主な災害ー国土交通省ホームページ

  

美しい急流は、地域に様々な恩恵や文化をもたらす半面、何度もの水害という形で人々の安心で安全な暮らしを脅かしてきていることも紛れもない事実なのです。

  

私がとても印象的だったのは、令和2年7月豪雨のあと、被害を受けた地区の住民の方がインタビューに対して、

  

『家を流され、恐い思いもしたが、この川(球磨川)を恨むことはできない。ずっと私たちはこの川に生かされてきたから。』

  

と答えられていたことでした。豊かな自然と共存するということは、こういうことなのだと感じました。

  

  

球磨川沿いでの災害復旧地質調査

また、同じ球磨川水系で16年連続で『水質が最も良好な河川』に選ばれている、日本を代表する清流の一つ川辺川。

球磨川に流れ込む最大の支流が、川辺川です。

  

ここに川辺川ダムを建設するという計画があったという話は、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

  

球磨川で昭和38~40年にかけて3年連続で大きな水害が発生したことを受けて、当時の建設省から川辺川ダムの建設計画が発表されたのが昭和41年のことでした。

  

そこから、何度も検討会や意見交換会などが開かれ、ダム建設による環境への影響に対する反対も多く、最終的にはそれから40年以上の時を経て、平成21年に正式に川辺川ダムの建設中止に至るのです。

 

※川辺川ダム事業の詳細な経緯は、下記リンクからご覧ください。

◎川辺川ダム建設事業の経緯『川辺川ダム砂防事務所』ホームページ

   

  

災害から人々の暮らしを守るということと、美しい清流の環境を守るという2つの使命を同時に達成するのは、それだけ難しいということなんだと改めて感じます。

  

そしてこの川辺川ダムについては、令和2年7月豪雨を経て、球磨川の治水において再度必要性が見直され、新たな流水型ダム建設の計画が動き出しています。

  

  

安全な暮らしと自然環境 両方を守れるか?

  

以前の記事でも書きましたが、地質調査は基本的に開発行為に先立ち、設計・施工の基礎資料を得るために行われることがほとんどです。

  

やはりそのトレードオフの関係にある、災害に強く、安全な暮らしと自然環境の保護を両立させることは簡単ではなく、これからも終わらない課題だと思います。

そして、その終わらない課題とともに、地質調査の仕事も続いていくのだと思います。

  

  

【川辺川沿いでの災害復旧の調査の様子】

川辺川を見下ろして

  

  

  

災害復旧にも地質調査は不可欠

  

  

今回は、『水質の最も良好な河川』に選ばれた熊本県の球磨川、川辺川について少しだけ考えてみました。

  

みなさんもどこかに出かけ、街中や大自然の中を流れる河川に出会った時には、その地域と川との関係性や歴史、治水対策、川を守る取り組みなどについて少しだけ考えてみてもらえると嬉しいです。

  

(その時、上の写真のような足場と櫓を見かけたら、調査中です!心の中で応援してもらえるとなお嬉しいです。笑)

  

※今度の休みは、何に出会いますか?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です