若手技術者育成への取組み -学生向けインターンシップの実践例-

会社として、業界のためにリスクを取れるか

私のいる会社やその周辺においても、地質の技術者の高齢化と若手技術者の減少は以前より囁かれていました。

地質調査の仕事というのは、やはり特殊な業界であり、一般の人の生活にとって関わりが薄い(実は見えないところでは関りが深いが・・)ため、認知度も低く、イメージもしずらい仕事であることは間違いないでしょう。

また若者が少ない理由はおそらくそれだけではなく、将来を見据えて、業界として新卒採用を始めとする若手の技術者の育成というものに積極的ではなかったからだと私は感じています。

もちろん新卒採用や若手の技術者を0から育成していくのには会社にとってのリスクもあります。

お金と時間がかかります。しかもその結果一人前に育てられるかもわかりませんし、途中で他社へ転職する可能性もあります。

就職、転職
人材育成には企業側にもリスクがある

それらを恐れてなのか、業界的には即戦力となる人材の中途採用ばかりに向いていたように感じます。

その気持ちもわかりますし、確かにこれまではそれを続けてなんとか業界も成り立っていたというのも事実です。あえてリスクを取る必要性が低かったのかもしれません。

しかし、それはつまり『現在』のこと、そして『自社』のことしか考えていなかったということになります。

即戦力の中途採用ができていたということは、裏を返せば、どこかの会社がリスクを負って技術者の育成を行っていたということです。

会社を維持するために自社のことを最優先に考えるのは当然です。しかし業界全体が衰退しないように、余裕がある時には少々のリスクを負ってでも技術者の育成に取り組む必要があったはずなのです。0

それをやってこなかった結果が、現在の若手の技術者不足につながっているのではないでしょうか。

そこで、参考になるかどうかはわかりませんが、私のいる会社で行った2回の学生向けインターンシップの様子を少しだけご紹介します。

若手技術者育成に向けたインターンシップの取組み

そんな時にようやく私のいる会社でも、若手の技術者を育成するために、まず1人の新卒採用を目指そうということになりました。

まあ、これだけでも大きな前進と言えますが、これまでほとんど新卒採用など行っていなかった会社ですので、新卒採用や入社後の教育について知識や経験がありません。

そこでまず、採用に向けたセミナーなどに顔を出し、新卒採用の流れや進め方を学ぶことから始めました。

まずは採用の勉強
まずは採用について学ぶことから

そして1年ほどセミナーに通ったあたりで、主催者の方から、試しに学生さんのインターンシップを受け入れてみないかとの提案をもらいました。とりあえず最初なので、1日だけのインターンシップで、と。

もちろん断る理由なんてなかったのですが、インターンシップの受け入れなど経験がありませんので、どんなことをやったらいいのかなんてわかりません。

担当の方や社内のスタッフとも議論を重ねて、まずは、『この仕事を知ってもらうこと』難しいことは抜きにして、取り敢えず地質調査という仕事を見てもらい、知ってもらおうということになりました。

インターンシップに実践例①

そしてインターンシップ当日、3人の学生さんが来てくれました。みな、地学を専攻しているわけでもないので、地質調査についてはほとんど知識がない状態でした。

なので、まずは簡単に地質調査という仕事がどんな仕事なのか、どんなところで活躍しているのかを社内で説明を行いました。みなさん初めて知る業界のようで、興味深そうに話しを聞いてくれていました。

その後、車に乗り、実際に調査中の現場の見学に行きました。

1箇所目は、大規模な工業団地の造成に係る事前調査の現場です。(実は、今話題の海外の大きな企業が来る場所であることを後々のニュースで知りました。)

インターンシップ現場見学
現場見学の様子

写真は、『現地浸透試験(土研法)』(外部リンク)という試験の風景です。大規模な開発を行う際に、雨水の調整池をつくるための事前調査です。

簡単に言うと、バックホウで地面を掘り、その中で水がどれくらい浸透しやすい地層なのかを調べる試験です。最近はいろんな場所で、この試験の依頼を受けることが多くなりました。

この時は、ちょうど役場の職員さんや設計事務所の担当者も立ち合いに集まっており、学生さんからは、『ドラマで見る工事現場のやつだ』『大がかりな試験で驚いた』などの声が出ました。

地質調査ではボーリングだけでなく、このような様々な試験も行います。これもなかなか目にする機会がないので、知らない方の方が多いのではないでしょうか。

2箇所目は、海に近い河川内でのボーリング調査の現場です。

こりらの現場は、先ほどとは違い水上に桟橋と足場を造り、ボーリングを行っています。

水上でのボーリング
水上で行うボーリング調査の様子

きれいに作られた通路用の桟橋と足場に、みなさん感心しているようでした。これは私もいいなあと思ってしまう仮設風景です。

みなさん、現場の様子を初めて見たので、とても勉強になったと言ってくれました。

ただ、やはり地質調査というものを全く知らない人に、その重要性や役割を説明するのは簡単ではないですね。その業界に長くいて知識があるので、どうしても専門用語が入ってしまうんですよね。

この初めてのインターンシップでは、おそらく学生さんより私たちの方が学ぶことが多かったように感じます。

インターンシップの実践例②

2回目のインターンシップは、事前に企業説明会などにブースを出した時に出会った学生さん2人が参加してくれました。

今回の2人は地質について知識があり、興味を持っているようでしたので、前回よりもよりリアルな体験と実践を取り入れたものにしようと思い、内容を変更して行いました。

そこで、ボーリング作業自体を体験してもらおう!と思ったんですが、実際の現場ではなかなか難しい。となれば・・・

会社の敷地内でボーリングするしかない!

というわけで、ある機長さんにお願いして、会社の倉庫の敷地にボーリングマシンをセットし、実際に掘ってもらいました。

ボーリング調査実践1
自社に敷地内でボーリングを実施

作業に伴い音が出るので、近隣の方々には事前に声かけが必要でしたが、これが一番近くで体感できます。実際に掘り始めから、標準貫入試験(外部リンク)まで行ってもらいました。近くでみるとなかなか迫力ありますよ。

機械操作の実践
実際に機械の操作も体験

そして機長さんに付き添ってもらって、ボーリングマシンの操作も体験。これはなかなかレアです。2人とも緊張していましたが、これはとても楽しそうに操作方法を教わって、興味深そうに機械の動きを確認していました。

実際に取れたコアを確認
貫入試験で採れた試料を確認

その後、実際に目の前で行った標準貫入試験で採れた土の試料を開封してもらいみなで確認。ボーリング調査によってどのように土の試料が採取されているのか、一連の流れを目の前で見ることができる。

これは、自分たちも思い切ってやってみて良かったと感じました。協力してくれた機長さんにも、感謝です。

ボーリング調査の実践のあとは、実際に別の現場で採れた試料を観察し、どんな地層なのかを自分なりに考え、ソフトを使って簡単な柱状図(外部リンク)を作るという体験を行い、1日のインターンシップは終わりました。

試料観察
丁寧に試料を観察
柱状図の作成体験
自分なりの考えで柱状図を作成

ここまで2回のインターンシップの実践例についてご紹介しました。

実際にインターンシップを行い、正解はないと感じました。また、自分たちのやっている仕事をどのように伝えたら魅力的な仕事として感じてくれるのか、どうすれば短い期間でも、より質の高い経験を与えることができるのか。

それを常に考えていくことが大事なのではないかと思いました。若い世代の考え方や流行などにも敏感になり、年齢は離れても、少しでも感覚的な壁を作らないようにアンテナを張っておく。

学んでいるのは、我々の方でした。

そして、もう一つ大切なことは、『あきらめない』ことではないかと思います。

特殊な業界だから、きつくて、汚れる仕事だから、みんな地質調査なんて知らないから・・・そうやって若い世代への壁を自分から作ってはなにも始まりません。

最初から気負わず、まずは知ってもらえばいいというぐらい気楽に始めていくといいのかなと思います。

私たちもまだまだ動き出したばかりです。目の前の仕事を確実に行いながらも、日々少しずつでも、将来に向けた取組みを進めていけるようにこれからも動いていこうと思います。

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