地面の形を変えずに穴を掘る?-歴史的価値と制約のある現場-

地質調査は様々な場所で行われています。

以前、歴史ある神社の敷地内、しかも参道の真横で調査を行わなければならない現場がありました。

熊本にお住いの方なら、というより寺社仏閣に少し興味のある方ならご存じの方も多いだろうと思われる有名な神社でした。

海外からの観光客も多く、熊本県内の観光名所でもあります。近年は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、観光客は少なかったです。

しかし。観光地にとっては改修工事や補修を行うにはちょうどいいタイミングでもあるのでしょう。いろいろな場所で工事などが行われていました。

美しい夜明け
朝方の敷地内の様子

ただ、こういった場所で調査を行う時には、通常よりも多くの制約が出てきます。

まず、機材等の搬入経路についても神社の境内の中であるため、軽トラックがようやく通れるぐらいの砂利敷の歩道しかありません。

通常ボーリングマシン等の機材の搬入時には、2~4tのユニック車(クレーン付きのトラック)で現場に行きます。

ボーリングマシン本体だけでも小型のもので2~300kgあります。そのためトラックから機材を下す際にクレーン装置が使えるのと使えないのでは大きく違います。

しかし、通路が狭く軽トラック等で進入する場合には、大型のトラックで近くまで行き、そこで軽トラックに乗せ換えて少しづつ運ぶ必要がありますし、機械の乗せ降ろしも人力だとなかなかの重労働です。

しかも通路脇には、きれいに剪定され整えられた松の木が並んでいます。張り出したその枝先にも絶対に接触することはできませんので、細心の注意が必要でした。さらに開園時間中は搬入・搬出ができませんので、閉園後の夕方から夜にかけて作業しなければなりません。

次に実際の調査ポイントですが、参道のすぐ隣、もともと鳥居が建っていた場所です。

参道を通る人たちからも近く、目立つ場所なので、作業中の様子が見えないように周囲に目隠しのシートを張る必要がありました。

そうなると作業スペースはかなり限られるため、いろいろな工夫が求められます。(櫓の上部は見えても良いとのことでした。)

調査の様子
作業中の様子(注意書きは日・英・中・韓の4か国語)

そして、掘削を始める前には県の文化財課の方が立ち合いに来られました。

このような神社等の場合、敷地全体が文化財として歴史的に重要なものになりますので、その地形さえも文化財であり、勝手に変えることはできないのです。

県の職員の方からは、どれぐらの穴を掘るのか?深さは?地形は変わらないか?復旧は問題ないか?などいくつも確認がありました。

ただ、地形を変えないようにと言われても、地質調査はそもそも地面に穴を開けそこの土を試料として採取しますから、完全に地形を変えないのは不可能なのです。

このあたりは実際に工事を行う段階においても非常に難しい問題になってくるようです。

今回はなんとか、地形の改変を極力少なく抑えることを条件に調査を認めてもらえました。そして良い経験になりました。

みなさんも寺社仏閣に限らず様々な観光地を訪れた際には、ぜひ周囲を見回し、どのように工事が行われたのか、維持管理はどんな方法でされているのかなど、ちょっとマニアックな視点で見てください。また違った景色が見えてくるかもしれません。

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